イン・ザ・メガチャーチ
2025/9/23
あらすじ
・一人暮らしの中年男性である久保田。久保田は孤独な生活で月に一度の娘との会話を楽しみにしているが、それも愛情からではなくただただ孤独で「これ以上人との関わりを失いたくないだけだ」と分析してもいる。
・久保田の娘である澄香。彼女は繊細な性格で人と比べやすく、自分自身の価値を認めることができないでいる。
・すみちゃん。30代か40代の女性で一人暮らしをしている。もともと「倫太郎」という俳優の大ファンだったが、彼が突然自殺してしまったことで大きなショックを受けた。
それぞれの弱さとそれを補強するための信仰が
アイドルグループを運営する人、アイドルグループにのめり込む人、陰謀論的な組織の一員となって世の中の真実を宣伝する人
という3人の視点から語られていく物語。
感想・レビュー
どこで書いてあったかは忘れてしまったけれど、
澄香が「私はあえて視野を狭める。何故ならどれだけ広い視野を持って世界の情勢を見たところでその情報は自分を傷つけるだけだし、パワーを与えてはくれない」
と言っていた。その後で、スマホゲームのプロモーションの専門家みたいな人が「我々は搾取をしているのではない。むしろ輝く機会を与えているのだ。今の人々は価値観が多様化し、信じることのできるゴールもない中でただ全身全霊をかけて輝けること自体が価値である」
と言っていたと思う。
それから、この話では3人とも何かに縋ることでなんとか孤独だったり、自身のなさだったりを乗り越えようとしていた。
最後の方で久保田さんはおじさんながらも新たにできた友達のために、食料なんかを買い込んでお見舞いに向かうのだが相手からしたらストーカーのような行動に見えてしまう。それでも久保田さんはお見舞いに向かっている時はルンルンだった。
思い込みの力はすごく強くて、現実の状況を全て追いやって脳内だけで幸福感を完結させることができる。
孤独なおじさんも、繊細な女の子も新興宗教にハマってしまうおばさんも、なんとなく想像できるというか、読む人みんなが誰かしらに少し感情を乗せて読めるのではないかと思う。
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